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湯川住み方研究所の暮らしにまつわるストーリー

家ではなく、まちに住む『暮らしの妄想ストーリー』
  • chapter1:平日ver. 6:30
  • chapter2:平日ver. 21:00
  • chapter3:休日ver. 11:00
  • chapter4:休日ver. 16:00
  • 湯川一富プロフィール

 

chapter1
平日ver. 6:30

窓を開けると、部屋の中に柳井町商店街の BGMが流れ込んできた。
朝は小鳥のさえずりらしい。ベッドから立ち上がり、ロフトを降りる。
一階の土間には小さな机とイスが置いてある。
この引っ越しに備えて気に入ったものを少しずつ集めてきたので、
例えばイスも一つ一つがそれぞれ違うデザインだ。
せっかく新生活を始めるのだから、好きなものだけに囲まれて生活したい。
確か近所にいい感じのうつわ屋さんがあった気がするな、
こんど食器を探しに行ってみよう。

朝食の準備をする。食事は基本リビングだが、気分によって、
この土間にあるテーブルで済ませる。冬は石油ストーブを置いて、
ちょっと寒い中で食べる鍋なんかは最高だろうと思う。
それにこの土間は、マイペースな私にぴったりだ。
ついゆっくりしてしまって遅 刻しそうな朝も、全ての支度を済ませて、
靴も履いた状態でご飯を済ませられる。
コスト コで買ってきたシリアルを食べてそのままチャリに乗って職場へ、
なんてめちゃくちゃか っこいいではないか。
いつかみた洋画でこんなキャリアウーマンを見た気がする。
と、そ んなことを考えていたらあっという間にまた時間が経っていた。
玄関を出て、商店街の風ぐるまに目をやる。
今日はえらく回転が速いので、髪はくくっ て行こう。
適当に髪を束ねて、自転車に跨る。いってきます。

chapter2
平日ver. 21:00

疲れた。夜の柳井町商店街に帰っていく。
なんだか日中とは違ってディープな雰囲気だ。
ガヤガヤした中心街から少し離れた、異世界感。
BGM は「イパネマの娘」か、この 曲すきだな。
玄関に自転車を入れ、コーヒーを飲むため土間のキッチンでお湯を沸かし、
そのままリ ビングでコーヒー豆をがりがり。
コーヒーを淹れたら、
リビングに置いてある独立式のハンモックでダラダラ。最高だ。

シャワーを浴びる。水蒸気で少し曇ったガラス張りの窓を手で撫でて、
私だけのリビングを見渡した。家具や雑貨の一つ一つを眺めながら、
いつか母が言っていた「選び取るもののすべては、
その人の生きる佇まいを表すんだよ」という言葉を思い出した。
身の回りの物も、自ら住むと決めたこの部屋も、まちも、
きっとその全てが私らしさなんだ。

お風呂を済ませてロフトにあがり、ベッドに寝転がる。
シーンとした部屋で、天井を見つめた。
商店街のBGMも、もう眠りについたようだ。
車の通らないこの商店街の夜はとても静かで、
ああ、眠い。おやすみなさい。

chapter3
休日ver. 11:00

こんな時間まで寝てしまっていた。
窓を開けると商店街からカーペンターズの「Top of the world」が
流れ込んできて、単純な私は活動意欲がじわじわと湧いてくる。

サンダルを履き、
朝ごはんだか昼ごはんだかわからない食事をつくるため、
土間のキッチンへ向かう。今日はちょっとカフェ風にしてみよう、
と土間にあるテーブルにテーブルクロスをかける。
今日の朝ごはんはフレンチトーストだ。
お気に入りの器にふわふわのフ レンチトーストをポテッとのっける。
この輪花型のお皿は、近所のうつわ屋独歩さんで購 入したものだ。
はい可愛い、はい最高、と一人で満足する。

よく考えたら、私は引っ越してきたばかりのこのまちのことを何も知らない。
ぶらっと散歩してみることにした。

お隣の古本屋浮雲書店には、お兄さんがぽつんとお店番をしている。
勇気をもって 話しかけてみたら物腰が柔らかくて、話しやすい。
仲良くなれるかもしれないな。
大好きな星新一さんの短編集をみつけたので、購入してお店を出た。
星新一シリーズは大体網羅していたつもりでいたのに、
意外にもこんなに近くにまだ読んでいないものがあったとは。

まちをぶらぶら歩く。できるだけ、まだ知らない道を選んで歩く。
この辺は銭湯が多いな、銭湯巡りでもしたら面白そうだ。
こんな風に改めてまちあるきをしてみると、
実はいろんなことを見逃していることに気付かされる。
このまちのこと、もっと知りたい。夕飯の材料を買って帰ろう。

chapter4
休日ver. 16:00

やっぱり休日は家でゆっくりするに限る。
さっき古本屋で買った本を読みながら、
リビングのハンモックでくつろぐ。高い天井を見上げる。
明日からまた仕事だ。
「はあ、」とついたため息が、高い天井に吸い込まれていく。
不思議と心は窮屈じゃない。
この高い天井のおかげというのもあるけれど、
私にはきちんと帰る場所があるからなのだと思う。
暮らしてみて、まちの人と話してみて、
少しずつ自分の居場所ができあがっていく。毎朝、私を見かけると、
挨拶と一緒に一言声をかけてくれる来島金物店のおじさんがいること。
朝早くから仕込みをするステクル弁当から漂うお惣菜の匂い。
このまちを選んでよかったと思う。

さあ、晩御飯の支度をしよう。
今日は何をつくろうか、考えながらキッチンの窓を開け た。
商店街の BGM は…、お、今日は演歌なのか。
一貫性のないプレイリストも面白くて好きだ。
もうすっかり、窓の外は夕日の色に変わっている。
一日が少しずつ終わっていく。今度、友人をこの部屋に、
このまちに招待しようと思った。

柳井町商店街の一角の小さな空間に生まれた「アリーアパートメント」。
空間デザインはとっても個性的、
だけど心地よくて自分らしいライフスタイルを描くことができます。
また、商店街ならではの暮らしの楽しみがいっぱいの日々がここにはあります。
そんなお届けしたい暮らしのイメージを、
今回は妄想ストーリーでお届けしました。
西田さきさん、素敵なエッセイとイラストをありがとうございました。

  • 掲載日:2019/6/20
  • エッセイ・イラスト/西田さき
  • 建築写真/平井 広行

湯川住み方研究所代表
湯川 一富
2005年に不動産賃貸業を松山で開始。
『快適で楽しい賃貸住宅を創造する!!』
を目標に高入居率・高収益を達成。
自らゼロから企画し、今まで松山に無かったものを創りたいという思いから、2011年より『新築収益物件プロジェクト』をスタート。
2013年3月に第一弾物件「SPIRAL」完成。
2013年5月〜柳井町商店街で「家ではなく、まちに住む」をコンセプトにまちづくりに奮闘中。