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建築家 進藤強×湯川住み方研究所 スペシャル対談

 

ないものを作りたい。<br /><br />
そんなとき出会ったのが進藤さんでした。

お2人の出会いのきっかけは?

湯川 :
最初、僕が今まで松山にないものを作りたい、
自分ならこういう風に建てたいっていう計画があったのですが、
なかなか実現できなくて、ひとりでもがき苦しんでいたんです。
そのとき知人に進藤さんを紹介していただいたのがきっかけですね。

苦しんでいたというのは?

湯川 :
新築プロジェクトが始まって、まず土地を探していました。
そんな時、立地は良かったのですが18坪しかない狭小地を見つけて、
とても狭いけどなんとかそこに面白い物件を作りたかった。
最初に依頼した方とは、既存の常識の枠の中で話をしていました。
なので結局は他と似たような物件や資金計画になってしまいました。
長時間かけて打合せしてきたのですが、このまま進めてしまっていいのか
自分の中で葛藤があって。でも答えは出ていて、
このままではマズイなと思っていて…。
進藤 :
そうでしたね。最初に見せていただいた図面は、
普通に1階に水のタンクがあって、駐車場があって、
これがオーソドックスな賃貸住宅のルール!みたいな感じでしたね。
湯川 :
ただでさえこの土地は制約がすごく多い。
奇抜なものよりもオーソドックスな方が建築計画は楽だけど、
それじゃ住む人が自分の住まいに楽しさを感じないし、
差別化という部分でもよくないなと思って。
進藤 :
賃貸住宅を作る上で今は90点、100点のプランだったと思うけど、
将来は100点かどうか?
僕は60点かもしれない、でも200点かもしれないものを、
どう作っていけるかをいつも提案しています。
一般的なプランは当然同じようなものがいっぱいあるから、
結果的に競争に負けるし、10年20年と残っていけない気がします。
普通の物件は優等生で、SPIRALはどっちかっていうと、ちょっとやんちゃ。
でも200点とっちゃうみたいな(笑)。
初めての建築家との仕事。初めての地方での仕事。

湯川さんにとって新築は初めてだったんですか?

湯川 :
はい。これまで10年近く中古物件を再生してきました。
新築の1番良い所は自分で企画してゼロから作れるところ。
どこまで自分の企画したものをカタチにできるか、そこにチャレンジしたかった。
土地から購入して、住む人も楽しくって、収益的にも競争力的にも成立するもの。
そこを自分でできたら、すごくうれしいじゃないですか。
今までにないものを実現したかったんです。

建築家さんにお願いしたのは初めてだったんですよね。

湯川 :
最初は建築家の方って、敷居が高くて、
しかも有名な方だと頼んでもなかなか引き受けてもらえなかったり、
こちらの希望を聞いてもらえるのか、正直不安でした。
でも自分と建築会社以外の、第三者の専門家が入った方がクオリティ的にも
進め方にしても絶対にいいものができると予想はしていました。

進藤さんは松山のお仕事は初めてですよね?

進藤 :
そうです。ちょうどローカルな仕事をしようと思っていました。
実家の神戸の叔母が賃貸物件を作ったけど、ハウスメーカーに頼んだみたいで、
僕がいるのに相談もしてくれないことがショックで。
地方はまだまだ建築家の出番があると思ってたところだった。
それで四国の話が来たから、関西の仕事のスタートは四国からだ!と思いました(笑)。

まずどんな話からスタートしましたか?

進藤 :
まず最初に湯川さんに会って、「僕は“人”とやってるのであって、
実績を作りたいわけじゃない」って話をしました。
依頼主と会ってその人と1年間やっていけるかが僕の中では重要です。
一緒に解決しないといけない問題がいっぱいあって、
ましてや僕は問題を作るわけですから(笑)。まあ問題というか
一般にあるものを作らないので、最初から問題を出して、
問題を一緒に解ける人としか仕事できませんって伝えました。
湯川 :
最初は僕も紹介してくれた知人に「もしかしたらプレゼン見て
内容によっては断るかもしれないけど大丈夫?」って言ってました。
そしたらそのプレゼン内容は僕の断るかもしれない
なんて想像は遥かに振り切ってて(笑)。
それよりも話してて楽しいものを作りたい。普通のものを建てるのだったら
何も僕に頼まなくていいんだ、競争力のあるものを作っていきたいと言われて、
その考え方を聞いて、一緒にやっていける!!と感じました。
それにね、しゃべりもこれ…関西弁じゃないですか(笑)。
年齢も近かったし、意気投合するのに時間はかからなかったですよね(笑)。
進藤 :
賃貸住宅ってちゃんと入居してもらえるかが大事じゃないですか。
個人住宅はその人がよければいいけど。
今、僕は東京の仕事がほとんどなんですけど、東京だと住んでるから
住む人の気持ちもわかる。だけどこっち(松山)は住んでないし、
家賃の相場もわからない。近くにどんなカフェがあって、どんなビルがあって、
どんな人が暮らしていますか、というやりとりをメールでひたすらしてましたね。
入居が決まらないと、僕もダメな建築家になっちゃうじゃないですか(笑)。
そしたら湯川さんからもメールがワーって返ってきて、この人とだったら、
大丈夫だと思いました。今までは大家さんがハウスメーカーに丸投げしてた時代だから
ダメになったのかも。大家さんには大家さんのプロとして
ちゃんとリサーチして、判断してもらいたい。
湯川 :
丸投げではなくこっちも命がけでやらないと失礼だし、いいものは絶対できないと思って、
進藤さんに自分なりのリサーチ結果を伝えました。
考え方はあくまで住む人目線で本当に楽しい住まいを提供したい。
そして住む人がよろこぶと満室になる。大家さんもよろこぶ。
活用しにくい狭い余ってた土地が活かされると地主さんや売主さんも喜ぶ。
みんなハッピーになりますよね。
今回はひとりではカタチにできなかった部分を進藤さんがカタチにしてくれました。
ないものを作りたい。

SPIRALはどんな物件ですか?

湯川 :
進藤さんは最初から言ってましたよね。
「解放的な気持ちよさ」って。最初はぴんときてなくて。
でも出来上がって納得です。縦に続いていく解放感。
気持ちよさがつながっていくイメージです。
進藤 :
SPIRALは賃貸だけど外みたいな空間でお風呂に入れます。
普通の考え方でいくと、賃貸の場合はお風呂は下の階にあって、ユニットバスですよね。でも体験してみると、解放感に気づきますよ。
住宅の世界では当たり前のことが、賃貸ではまだまだ採り入れられていない。
大家さんも自分の家じゃないし、そこまで踏み込まない。
本当は借りる人が幸せかどうかで、みんなが幸せになれるのに、
そこを見ていないのかも。
湯川 :
9mの吹き抜け空間に、全高8mの螺旋階段!
そんな部屋見たことないし、想像しただけでワクワクします。
結婚して子供ができたらマイホームへ移られると思いますが、
その独身の間だけでもSPIRALで生活すれば
『楽しく暮らす』が体験できると思います。

コンセプトはありますか?

進藤 :
僕はもう自分が住みたいってことしか考えない(笑)。
これが正解かどうかは分からないけど、僕が住みたかったら
僕と同じ想いの人はきっと何人かいるはず。
よく言うんだけど、ここなんて住むの4人でしょう?4人ならどんな変態でもいますよ(笑)
これが40世帯だとむずかしいかな。僕みたいな人間は40人はいないかも。(笑)
ようするにコンセプトよりも、自分が住みたいか、気持ちいいかが重要なんですよ。
湯川 :
とんがったミュージシャンみたいですね。俺は誰かのために歌っていない。
自分のために歌ってるんだ!みたいな(笑)。誰かが作ってて、
成功しているコンセプトだから僕も作ろう、っていうのは違いますよね。
そういうのはこれからはますます支持されない気がします。
進藤 :
僕は入居者が入るとピンポーンって会いにいきます。
僕の好きな物件に住む人は僕が好きな人なんだろうな、って。
この間も住んでる人に会いに行ったら、勝手に住人同志でパーティしていてびっくりして。
そういう仕掛けで確かに作ったけど、建築を作ったときの想いが
そのまんま入居者に伝わったのが驚きでしたね。
湯川 :
そういう想いでやってると、建物を通して迫力となって入居者に伝わるんですね。
僕の物件でも入居者同士がコミュニティを作ってくれるとうれしいな。
また、住み方・暮らし方で言えば、ドラえもんにとっての押入れじゃないですけど、
どんなにせまくても居心地のいい空間ってありますよね。
いろんな価値観・いろんな住み方があっていいと思います。
進藤 :
そう。ターゲットとか言ってるのももう古いのかも。
ないものを作りたい。

これから地方の賃貸はどうなっていくと思いますか?

進藤 :
東京はいろんな物件が増えて、いろんな好みの人にあわせた物件ももうあるから、
逆にみんなが面積や立地を見るようになってきてるんですよ。
10年前はデザイン賃貸っていうとそれだけで入居待ちだったんですが、
今はそんなことはない。それをさらに選ぶ時代。
また古い価値観を壊さなくちゃいけない。
地方にはまだ可能性があると思いますよ。個性的な物件がまだあまりないから。
湯川 :
超個性的なSPIRALなんか仲介業者さんに
「この物件の間取りは?」って聞かれても、僕がこたえられない(笑)。
既存の枠では測れない間取りです。
進藤 :
いつもきかれるんですけど、僕も何LDKか分からないんですよ。
それになんて呼べばいいのか。ないものを作ってるから(笑)。。。
湯川 :
これからも松山から個性的な物件を発信し、
色々な住み方提案をしていきたいですね。僕は不動産屋でも建築会社でもなく、
住み方マニアでありたい。住む人にも大家さんにも喜んでもらえる住み方提案がしたい。
業種の枠も越えられたらいいですよね。
「みつけよう、自分らしい住み方」。このスローガンにすべてが集約されている気がします。
この先もし方向性に迷うことがあってもここに立ち返ろうと思います。
進藤 :
湯川さん自身が一番住み方を楽しんで、いいと思うものを発信していけばいいと思う。
それがきらいという人がいても、それならそれでいいじゃないですか(笑)。
湯川 :
ありがとうございます!なんか勇気が湧いてきました(笑)。
がんばります!
  • 掲載日:2013/5/1
  • 取材・文/ドリームネットワークアクティビティ 川井知子
ビーフンデザイン代表
進藤 強
1973 兵庫県生まれ
1996 京都精華大学美術学部デザイン学科建築専攻 卒業
1998-2002 株式会社アーキテクトン 米田明に師事
2012 株式会社ビーフンデザイン
http://be-fun.com
湯川住み方研究所代表
湯川 一富
2005年に不動産賃貸業を松山で開始。
『快適で楽しい賃貸住宅を創造する!!』
を目標に高入居率・高収益を達成。
自らゼロから企画し、今まで松山に無かったものを創りたい
という思いから、2011年より『新築収益物件プロジェクト』をスタート。
2013年3月に第一弾物件「SPIRAL」完成。